国指定文化財 彫刻
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本尊(写真右)は八臂の観音菩薩立像である。榧(かや)と推定される針葉樹材を用いた一木造りの像で、内刳りもなく両側各臂の上膊部をまとめて一材に刻み、肩に矧付け、各手の前膊部はそれぞれ手先と共木に彫り、これを肘で矧付けている。
その簡古な構造に加えて翻波をまじえた衣褶のしのぎたった彫法は、いわゆる平安初期一木彫像の風にならうものだが、肉取りや衣文の彫り口には、その時代の力強さはみとめられず、また、天衣や裳の縁にうねうねとした翻りや立ち上がりなど、一種の地方作風ともいうべきくせがある。寺伝では本像を延命観音と伝えるが、不空羂索観音とみる説もある。
なお、本像は秘仏で、鎌倉時代後半のものと思われる同形の観音菩薩像(写真左)が前立尊として安置されている。